「これまでの10年」を振り返り、“これからの10年”を展望
—ユニットケア研修フォーラムを横浜で開催(2014.2.21)—

2014年2月21日(金)。横浜市西区にあるパシフィコ横浜にて、『ユニットケア研修フォーラム』を開催しました。厚生労働省がユニットケア研修等事業を開始してから今年でちょうど10年。今回のフォーラムは、当センターの歩みを振り返りつつ、「これからの10年を見据える」というテーマでさまざまなプログラムを企画しました。「重度化」「地域」「多職種協働」「個別ケアの展開」の4つのテーマで分科会を開催し、全国から集まっていただいた約1,500名の参加者が自由に参加できるようにしてみました。

10周年記念フォーラムに約1500人が参加

多床室の施設でもユニットケアは効果を発揮できる

山野良夫会長

まずは当センターの山野良夫会長が、あいさつを行いました。「ユニットケアの手法は、必ずしも『個室』の施設でなく、『多床室』と呼ばれる施設であっても、その効果を発揮するものと確信しております。全国の施設が『暮らしの場』として豊かな空間が整備され、サービスの質を担保して欲しいと思います」。

秋葉都子センター長

続いて、今回のフォーラムの趣旨・内容について、秋葉都子センター長から説明がありました。「ユニットケアも10年以上経つと、当たり前のものになってきました。改めてユニットケアはなぜ必要なのでしょうか。それは、“入居前の生活と、入居後の生活を連続したものにするためです。24時間シートを使って入居者の具体的なデータを取り、それに基づいて多職種協働によって、施設を“暮らしを継続できる場”にしていく必要があるのです」。

平均要介護度が高まり重度化が進む現実

フォーラム第1分科会 講師の方々

第1分科会『重度化する施設〜目指すこと・備えは何?〜』では、高齢者福祉施設 岩崎あいの郷の前施設長である日比野浩之氏を座長に、3人の講師が話しました。
まず、社会福祉法人 秦ダイヤライフ福祉会の理事長であり医師の福田善晴氏には、医療の立場から「重度化」定義を説明していただきました。 「実は、医学には『重度化』という言葉はありません。一般的に“病気が悪化し、生命を守るために濃厚な医療的ケアが必要な状態”を『重症』と言います。それでは、『重度』というのは、『障害が悪化し、日常生活を保つため介護が、継続的に濃厚に必要な状態』だと思われます。医療では『重症』、介護では『重度』と考える方も多いのではないでしょうか。実際には、介護が必要になると病気も重くなり、両方大変になります。今の時代はそれを、『重度』と捉えるべきだと思います」。

続いて、社会福祉法人 宮城厚生福祉会 介護事業統括施設長の海和隆樹氏より、現場に従事する施設長の立場から「重度化」の現状と、重度化に対応した人材育成について、語っていただきました。
「当社の介護老人福祉施設『十符・風の音』における平均要介護度の変化を見ると、2005年に『3.2』、2007年には『3.5』、2012年には『4.0』と、確実に要介護度は高くなっています。もちろん制度による影響もあります。介護度3・4・5は介護報酬が高くなっており、施設にとっては誘導の影響もあるためです。その一方で、2014年度に70名の職員を採用しました。なぜ70名もの採用ができたのかというと、採用専任の職員を配置して、施設見学に力を入れました。見学者は、職員の表情を見ています。単に職場の雰囲気だけではなく、個々の職員がいきいきと働いているかどうかを見ているのです」。

最後に、公益財団法人 テクノエイド協会 理事長の大橋謙策氏より、“新しい介護力”としての「自立支援」の取り組みについて話をしていただきました。
「自立生活支援には、労働的・経済的自立、精神的・文化的自立、身体的・健康的自立などの6つの要素があるといわれていますが、私は、もっと多面的に、自立支援を捉える必要があるのではないかと考えます。たとえば、入浴後に高齢者に『香水』をつけていただいたことがあります。日本には『香道』がありますが、香りを楽しむという自己実現があってもいいと思うのです。『快』という感覚は生きる上で必要であり、この自己実現をマネジメントするところから、ケアマネジメントのあり方を考えるべきではないでしょうか。
また自立支援における福祉用具の役割を、もう少し考えるべきだと考えています。たとえば世の中では、移動の支援や食事の支援、排泄の支援は行われているものの、『聞こえ方』に対する支援については、残念ながらあまり意識されていないようです。補聴器などの積極的な活用も必要ではないでしょうか」。

入居者最優先の「多職種協働」を実現するために

フォーラム第3分科会 講師の方々

第3分科会の『あなたはユニットケアを知っていますか?』では、社会福祉法人 長岡京せいしん会 理事長である五十棲恒夫氏を座長に、3人の講師がトークディスカッションをしていただきました。

まず、介護療養型医療施設 有吉病院 ケア部長・看護師の福本京子氏は、医療と介護の双方にたずさわる立場から「多職種協働」について語っていただきました。
「以前、関係者から『介護と看護が協働できるはずがない』と言われたことがありました。介護は目の前の問題を解決するものであって、看護は原因を追求し、専門性を掘り下げるもの。つまり、それぞれが目指している『ゴール』が違うというご指摘でした。それを聞いて私が感じたのは、スタッフたちには、『本当のゴール』が見えているのだろうかという疑問でした。『ゴール』はあくまでも入居者の満足であり、笑顔であるはずです。しかし多職種の現場では、それぞれの専門性を追求するあまり、高齢者の満足を忘れがちなのではないかと思うことがあります」。

また、特別養護老人ホーム ちくりんの里 生活相談員・介護支援専門員の中山淳氏は、介護の現場にたずさわる立場から〈多職種協働〉について語っていただきました。
「生活相談員や介護支援専門員はいわゆる『何でも屋ではなく、介護保険制度や施設の窓口としての〈専門職〉です。縁があって入居が決まりましたら、まずは、これまでの暮らしのアセスメントを行い、入居前のカンファレンスをしたあと、看護師や理学療法士、栄養士を交えて、情報を共有するようにしています。その中から暫定的なケアプランを立て、現場が『24時間シート』をつくります。その『24時間シート』をもとに、介護支援専門員がケアプランをつくります。こうして私たちは、多職種協働を行っています」。

さらに特別養護老人ホーム 真寿園の事務長である奥貫和彦氏は、介護における事務職の立場から、〈多職種協働〉について語りました。 「私が所属していた施設の総務部の事務職は、人事・物品・資金の管理が主な仕事でした。当施設では、2002年にユニットケアに取り組み始め、部署の名称も『総務部』から『総合支援部』に変わりました。いわば、従来型業務からの脱却です。最初は私たちも、カルチャーショックを受けることばかりでした。われわれ事務職も介護職と同じようにユニットケアを学び、同じ理念を共有できるように努めました。そうしなければ、施設の目標を実現できません」。
こうした話の後、座長の五十棲氏が加えました。「多職種協同で大事なのは、『自分で自分の仕事の範囲を決めないこと』です。多くの人が関わって仕事をすると、仕事を渡したり、引き受けたりしなくてはいけません。そこには必ず『隙間』が生まれます。そこを誰がやるかですが、まずは各々が積極的に引き受けて欲しいのです」。

会場では介護関連の企画・団体が展示

―重度化が進む、日本の高齢者介護。入居者の希望を叶えるためには、多職種協同で『ユニットケア』に向き合うことが必要です。またそれを実現させるにも、各々の仕事に『隙間』をつくらないような取り組みが求められています。

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