「思いに寄り添う」(特別養護老人ホーム 杜の風 八鍬 政男)
2018年2月15日 更新
ある入居者が終末期を迎えた時、最後に本人が望むことは何か、ユニットで話し合いを持ちました。入居してから毎年欠かさず行っていたことが、以前飲食店を経営し、年に一度はスタッフと共にその飲食店を訪れることを楽しみにしていました。終末期を迎えた当時、本人からも「最後になるかもしれないからいければいきたい」との意向でした。このことを実現したいというスタッフの要望があり、ご家族も同感でした。嘱託医との調整に入り、嘱託医からは終末期を迎えている中で外出はとても危険であり、体力が持つかわからないとの意見でした。ではどうすれば実現できるのか、共にご家族・嘱託医と話合いを続け、外出時は介護職員・看護職員・ご家族同伴であることや緊急時は他の医療機関との連携、体力的に飲食店(2F)に入るのは難しく、車中から見ることが条件でありました。残された日数は少なく、すぐに実施する運びとなりました。当日は、意識が朦朧としている中、「ここがお店ですよ」と問いかけると、車中からはっきり目を開き「そうだね」と、とても穏やかな表情で昔を思い出しているようでした。
それから数日後、安らかに永眠され、ご家族は、「ここに入っておばあちゃんとても幸せだった」と一言話していました。
入居者の方々の今までの人生の歩みの最後のステージに向かい、入居者の思いを実現すべく、微力な私達がどのように関わり、どうしたら「思いを形に変える」ことができるか、実現に向けて、取組むことができる環境がユニットケアではないでしょうか