ユニットケアが目指すもの

自分が高齢になり、何らかの理由で自宅に住み続けられなくなった時、皆さんは次の住まいや暮らしはどうありたいと思いますか?
「今までと同じように…」きっと誰もが、そう望むでしょう。

ユニットケアが大切にしていることは、
「介護が必要な状態になっても、ごく普通の生活を営むこと」です。

生活の基本行為としての起床、食事、入浴、就寝は、今までの暮らし方の継続を基本としながらサポートしていきます。そして、他の入居者とのおしゃべりや趣味の活動などの交流、地域の美容院に出かけることや家族とレストランへ食事に行くことなども大切にします。つまり、 その人のペースで暮らしが営まれることを支援していくのです。
ますます重度化していく高齢者施設利用者ですが、そのような方々でも、ごく普通の暮らしが送れるようにサポートしていきます。

ユニットケアは、それぞれの人が、それぞれに望んでいる暮らしをサポートする個別ケアの一つの方法です。それは、画一的な方法ではなく、暮らしと共に変化し、そして、進化していくものです。 普遍的なのは「高齢者の尊厳を保つ」こと、そのことのみです。

具体的には、

  • 自己決定の場がある
  • 生活の継続性がある
  • 残存機能が活用される

などが挙げられます。

その人が今まで大事にしてきた暮らしにこだわり、生活習慣を大切にします。
そして、たとえ寝たきり状態であっても、自分でできることや自分で決められることを見つけてあげ、サポートしていきます。ユニットという小さな単位であるからこそ、そのサインを的確に見つけられるのです。

ユニットケアの3つの要素

ユニットケアを実践するには「ハード(環境)」と「ソフト(暮らしのサポート)」の両輪が必要といわれています。
『ハードの持つ介護力』にケアは助けられ、『ハードを越えるソフトの力』に建物はうまく使いこなされます。そこで、「ハード」と「ソフト」は車の両輪にたとえられています。

今までの私たちのケアを振り返ってみると、「あのワーカーは、どの利用者にも細かな対応ができてすばらしい」と思えるような、そんな人を目標にケアをして きたと思います。そして、なぜ細かな対応ができるかといえば、個々の利用者の情報をきちんと持ち、その情報に基づきケアをしてきたからです。

では、皆がそのようにすばらしいワーカーになるには、どうしたらいいでしょうか?
今、私たちは、「ハード」と「ソフト」の理論を具現化するために、もうひとつ『システム=施設運営の中での仕組みづくり』も大きな要素であることに注目し ています。そして、これら「ハード」「ソフト」「システム」を「ユニットケアの3つの要素」として、ユニットケアを推進しています。

ハード(環境)

高齢者福祉施設は、普通に暮らす場であり、地域の中で暮らしていく場です。「住まい」であり「地域の集いの場」ともなる、施設というハードの持つ介護力を存分に活用することが、入居者の方々の暮らしを豊かに彩るためには重要です。
そして、「住まい」は、特別なものである必要はなく、「普通の暮らしぶり」をどれだけ多く建物や設備に取り入れることができるか、という視点が大切になってきます。
建物には、建てるにあたっての理念と理論があります。今、それらを正しく理解し、それぞれの空間に見合った暮らしを組み立て、味わっていただくことによって、家族・他の入居者・スタッフ・施設を訪れる地域の方々との豊かな関係性を築くことに繋げていけます。

ソフト(暮らしのサポート)

ユニットケアは、利用者が今までどんな暮らしをしてきたのかを見つめ、その暮らしのリズムに沿って実践することが基本です。
例えば、入居者のそれぞれの起床時間に合わせて朝食を用意することなど、利用者の方々が朝起きてから夜寝るまで、そして、翌朝に心地よく目覚めるために、どのようにケアしていくかという、入居者主体のケアを考えます。

早番は○と△の仕事、遅番は▲と□というように、職員の仕事にあわせた日課に入居者の暮らしをあてはめるのではいけません。入居者各人がどのような暮らしを望んでいるのか、その暮らしを理解したうえでサポートしていくことが重要です。

  • 起床、身支度
  • 食事
  • 入浴
  • 排泄
  • 昼間の活動
  • 就寝、夜間の状況

システム(施設運営の中での仕組みづくり)

ユニットケアのリビングにある職員の記録スペース

施設は、それぞれ専門職の集まりで運営されています。各分野が、また各人が、思う存分、その力量を発揮できることが、施設運営には求められているのです。 それにはまず、運営方針の理念があり、それを伝達していく組織があり、申し送りや記録、ミーティングなどの情報共有の方法、シフトの工夫や研修のあり方 などのチームケアのマネージメント方法、そして経営論も不可欠です。

ユニットケアの成否には、職員一人ひとりの自立と組織力が必要です。その運営に対する仕組みづくりや工夫が、これからの重要なポイントになります。 「介護が必要になっても、ごく普通の暮らしを営む」いう理念の確認をした上で、環境や設えも含めた意味での「ハード」、利用者中心の生活を支えるため の「ソフト」、それらを有機的・効率的に結び付ける「システム」の構築ということが、ユニットケア実践のカギとなっています。

  • 情報のあり方と活用方法
  • 記録
  • ミーティングと会議
  • 組織とシフト
  • ユニット費
  • 外部委託
  • 人事考課と職員の質の向上

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