全国から70名のユニットケア指導者が東京に集結
平成25年4月23日、TKPお茶の水カンファレンスセンター(東京)で第1回ユニットリーダー研修指導者勉強会を開催いたしました。
全国から集結したユニットケアのエキスパート
ユニットケアを行う特別養護老人ホームでは、介護職員にユニットリーダー研修の受講が義務づけられています。その研修事業を受託しているのが、私たち日本ユニットケア推進センター。全国各地で研修を実施するだけでなく、その研修を行う指導者の育成もまた、当センターの大事な役割です。
この日、ユニットリーダー研修指導者講習を修了した1期生から11期生の指導者が、勉強会のため東京に集まりました。北は北海道から南は鹿児島県まで、日本全国から集まった70名の指導者達。彼らはいわば、ユニットケアのエキスパートです。これまで、各ブロック単位での勉強会はあっても、指導者一同が顔を合わせるのは初めての試みです。
チームで競うグループワーク
今回の指導者勉強会は、当センターのセンター長である秋葉都子の挨拶に始まり、今年度見直しを行った研修テキストの変更点、指導者に求められるコーチングスキルの講義と続き、午後からはグループワークが行われました。
グループワークでは、指導者講習の履修期ごとのチームに分かれ、クイズに応えて正解の合計点数を競います。
「なぜスタッフをユニットに固定配置するのか、答えを考えて書いてください」と講師の秋葉センター長。
「はい。ほとんどのチームが書いていますが、『馴染みの関係』を築くためです。暮らしの継続の場にしていくため、入居者の些細な事にも気づけるよう、スタッフと入居者の関係性を密にするため固定配置が望ましい。10期生チームの回答にあるスタッフのシフトの話は、ここでは関係ありません。」
「正解したチームにはシール2枚。10期生チームはおまけでシール1枚。」
各チームがホワイトボードに張り出した回答について、秋葉センター長の厳しい採点が続きます。
研修プログラムがどうしてこのような内容になっているのか、狙いや理由を考えることで、参加者の理解がすすみます。また、時々回答者にマイクを渡し、受講者に求める答えに到達させるために、自分はこうやって誘導している、こういう進め方をしている、といった情報共有も行いながら、グループワークは進みました。
次世代の介護業界を担う指導者達
ここで学んだ内容をそれぞれが各地域のユニットリーダー研修で、現場のユニットリーダーに指導してゆきます。ただ、せっかく育った指導者も、所属する職場の異動や退職といった都合により続けられなくなることもあります。
「世間では、介護現場からスタッフが次々に辞めてゆくと言われていますが、それはプロとしての教育がされていないからだと思います。今日の勉強会に集まった人達はプロになろうと真剣に努力しています。そういう人がいると周りのスタッフもそれを見習ってプロとして育っていきます。この人達を活かしてユニットケアを広めてくれれば、日本のケアの中身は確実に良くなっていくと思います。」とセンター長の秋葉も期待を寄せています。
勉強会は午前10時から午後4時までの長丁場にもかかわらず、白熱した議論が続き1時間の延長戦となりました。さて、優勝チームはどこかというと、予想どおりの1期生チーム。つまり2002年度に最初の指導者研修を受けた”先駆者”です。1期生としての威厳と誇りを保てた結果となりました。次回からは1泊2日で開催しようとの提案もあり、参加者からはうれしい悲鳴(!?)が聞こえてきそうでした。
参加者からのコメント
ユニットケア創成期から取り組んだ先駆者のひとりである指導者研修1期生の小川裕美さんと、福本京子さんからコメントを頂きました。
指導者よりも共感者でありたい【1期生 小川裕美さん(宮城県)】
——ユニットリーダー研修に期待することは何ですか?
ユニットリーダー研修は、ただ参加すればよいという研修ではありません。ユニットリーダーの力量や判断が、施設で暮らす人、これから暮らしていく人の人生に影響を与えてしまうものなので、社会的責任が重いと思っています。
ユニットケアに限らず、新たなケアの取り組みで最初から成功しているところはありません。どこかでやって上手くいった取り組みも、自分のところでやってみると成功しないということは、これまで何度も経験してきました。ユニットケアも自分の施設に合うようにアレンジしていかないと上手くいきません。それぞれの施設のやり方があっていいと思います。
——指導者として意識していることは何ですか?
教えるというよりも、自分達も同じ壁にぶつかり同じ経験をした、「共感者」になりたいです。自分のところは前例がないなか、「ユニットケアって何だろう」というところから始まりました。何が正しくて何が正しくないのか、どうしたらいいのか、スタッフと何度も議論しながらやってきました。入居者一人ひとり生活リズムが違うのに、施設だから仕方ないよねと諦めていたことも、小さな気づきや工夫で可能となることもあります。自分が後悔しないように、自分が経験してきたことを次につないでいきたいと思います。指導者は責任もあるし、役割は大きいと思っています。
——本日の指導者勉強会に参加した感想はいかがですか?
これまでお互いの様子が見えなかったけれども、今回の指導者勉強会で、全体の共通理解が進んだと感じました。次に各ブロックで指導者として研修を行う時は、研修の落としどころや伝えたいポイントも分かっているので、あうんの呼吸で話を振ったり、話の道筋も立てやすいと感じました。これからもお互いの意識を共有するために、年に1〜2回指導者みんなが集まれるといいですね。
振り返りながら次の人へバトンタッチ【1期生 福本京子さん(福岡県)】
——ユニットリーダー研修に期待することは何ですか?
ユニットリーダー研修は、現場の介護スタッフに焦点を当てた初めての研修制度です。それだけ価値も大きく、初めて現場に陽があたったと感じています。ユニットは小さな現場ですが、リーダーに役割が与えられ、介護職員が活躍できるとても重要な場所です。期待もあるからこそ責任も大きくなっています。
研修をきっかけに、自分達がやってきてことを振り返り、上手くいったことも上手くいかなかったことも、次に活かしてほしいです。高齢者の日常生活は、めまぐるしい変化がありませんので、研修が節目となって、振り返ることが大事だと思います。
——指導者として意識していることは何ですか?
この仕事を通して、何に一番喜びを感じるか、何のためにやっているか、といった看護観や介護観をそれぞれの中に見いだすことができるように意識しています。いつも、自分だったらどうしてほしいか、諦めることなく前向きな気持ちで現場に立ち続けています。
自分達が始めた頃は、いいも悪いもわからず、ただがむしゃらにやってきました。他でやっている仲間との出会いがあって、それがいい刺激になり、たまに会っても「同志」と思える人達がいました。けれども今では、自分達にいろいろな「思い」を語れる体験がないという人もいるかもしれません。だからこそ、私達が経験してきたことを次の人たちにバトンタッチしていくのが自分の役割だと思っています。
——本日の指導者勉強会に参加した感想はいかがですか?
すごく良かったですね。これだけ多くの指導者が集まるのも大事なことです。指導者勉強会を始めた頃は、自分のことをまだ若手と思っていましたが、10年も経つと、いつの間にか「ベテラン組」になっています。指導者で集まってくる人もいろいろな経験を積んでいますし、若い世代もすごくよく考えていて、逆に自分が置いていかれるのではないかと感じました。年代の違いや多様性もあり、その中で自分も振り返ることができて良かったです。