[ユニットリーダー研修 本年度の傾向]と[施設見学特集](8月)
~平成26年度 ユニットリーダー研修 本年度の途中経過報告~
5月12日の新宿会場からスタートし、現在(平成26年8月20日)までの間に、北は北海道から南は九州まで全国15会場で、1969名の方に受講いただきました。
★今年度の特徴・・・研修の進め方・・・事前課題を効果的に活用
受講者には、受講決定と同時に事前課題の作成に取り組んでいただいております。その目的は、3つです。
1、施設管理者とコミュニケーションをとる
なぜ、自分がこの研修を受講するのか。その目的と意味をしっかりと説明を受け、施設を代表して研修を受講するという心の準備をします。雲の上の施設長と話をする機会もない職員、施設運営は一人の力ではできない、その協働の機会にもなります。
2、自施設の現状を客観的に把握・評価する
自施設(ユニット)運営の実情を事項に沿い調べます。取り組み状況を客観的に確認することができます。
3、それぞれの実情にあわせた課題を明確に抽出する
他施設のデータと比べることで、自施設の位置づけが明確になります。
この事前課題を3日間の研修中、自分の手元に置き、絶えずデータの確認をしながら、他の施設との比較をしながらの研修の進め方をしています。この研修は、施設をよくするための研修です。原理・原則だけでは、施設は変わりません。そのために、それぞれの実情にあわせた解決策を見出すことが重要なのです。
★事前課題を活用した研修で見えてきた傾向
座学研修2日目は、「固定配置と勤務表」から始めます。ユニットケアの基本「生活単位=介護単位」・少人数ケア体制は、なぜそうするのかの理論の理解と、どうしたらできるかの具体的運営についての理解は欠かせません。受講者各自の事前課題のデータをグループ毎に集計して一覧表に示めすと、次のような実態が見えてきました。
上記の表は、ある日の研修で、25名の受講者に尋ねた結果です。ユニット毎の「固定配置」は、25名中16名で約3分の2。他に2ユニット毎、フロア毎、全体と続きます。まだ、ユニット毎の固定配置ができていない状況がわかります。それと同時に「勤務表作成」について尋ねたところ、ユニット毎の固定配置にもかかわらず、勤務表の作成は、ユニット毎ではない施設が増えていることが見えました。これでは、「固定配置」の本来の意味が、まだまだ理解されていない実態が見えます。
ユニットケアは、システム(仕組み)論です。せっかく体制を取ってもその理解が正しくされないと負の要因が連鎖して、他にもできない状況が生まれ、本来の目指す「施設=暮らしの継続の場」が遠のいてしまいます。
今までは、介護責任者が一括して勤務表を作成し、それに従い勤務していました。ユニット毎に入居者の暮らしに合わせ勤務表を作成することが、「利用者本位のケア」につながる、その運営理論に気づくことはなかったのかもしれません。
★一口メモ・・・なぜ固定配置なのか。なぜ、ユニット毎に勤務表を作成するのか
固定配置については、特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準の解釈通知にユニットケアとは、生活単位と介護単位を一致させたケアと規定されています。これは、グループホームも同様の運営形態で、認知症ケアに有効な方法といえます。
高齢者施設は今後、重度と認知症の方が多く利用されます。自分の意思をうまく伝えることが難しくなる中で、そのような方々の暮らしをサポートし続けるためには、「いかにその思いに耳を傾けることができるか」「いかにその思いに気づくことができるか、そして、いかに些細な変化に気づくことができるのか」が大事になると考えます。そのためには、高齢者の傍らに、“いつも見慣れたあの人(職員)”となる職員が存在する意義は非常に重要な意味を持つのです。
また、入居者の暮らしに沿ったサポートをするためには、職員の働き方を入居者の1日の暮らしに合わせたシフトにすることです。入居者毎に違う暮らしは、必然的にユニット毎の違いにもつながります。そのため、勤務表はユニット毎に作成するのが、より入居者の暮らしに則した職員配置を可能にします。従って、ユニット毎の職員の固定配置と勤務表作成は切り離して考えるものではなく、一対として考えるのが本来の運営になります。
★事前課題の結果から見えてきた「固定配置」の現状
このような現象が起きている理由は、大きく3つあります。
1、人材難に対する姿勢
企業がひしめく首都圏でも、行政指導が徹底しているところは、必要な人材を確保し固定配置しています。その一方で、本当に固定配置を目指しているのだろうか、その意義の理解が進んでいるのだろうかと疑問に思うことが多々あります。人材難であることは否定できるものではありません。しかしその状況でも人材の確保と定着をするための目標に向かい真剣に努力や工夫をしているところとそうでないところは明らかです。全国的な傾向は、都道府県別に差が見えており、この要因は何か、明らかにしていく必要があると考えます。“人がいないから仕方がない”“隣の施設がしていないのだからそれでいい”といった、横並びでよいとする施設をうみだしていることは事実です。
2、職員の理解不足
十分な人員が確保されているにもかかわらず、職員をユニット毎に配置せず、2ユニットを1つの単位と捉えた職員配置をしている場合もあります。今までの集団ケアに慣れていた職員が、少人数体制に踏み切れない状況が、1つの要因としてあるようです。その原因の多くは、漠然とした不安です。不安は、正しい知識や理論がないまま進められることによって発生しています。ユニットケアの運営理論を知ることが、不安を解消し、自分たちのケアに自信をうみだします。また、他施設の取り組み状況を知ることで自施設や自分の取り組みについての考え方の違いに気づくことができ“これはまずい”と思えるようにもなります。
この現象は、施設でユニットケア理論について教えてもらえないことです。ということは、管理者自身がユニットケアの運営理論をしっかりと理解しているか、その上で一歩前に踏み出せる支持をすることができるか、一歩踏み出したその足が下がってしまわないように背中を支えてあげることができるか…。このような取り組みで状況は大きく変わると思います。
3、小規模施設の存在意義・・・建物は小規模だが、ケアは集団ケア
職員の固定配置を、フロアもしくは施設全体としている施設は、「地域密着型・サテライト型の小規模施設」がほとんどです。ということは、29人の入居者を一括してサポートしていることで、これまでの多人数ケアと全く変わらなくなっています。これでは、従来型運営と同じです。むしろ、従来型であっても、もっと少人数のグループ化を図ったケアを展開しているところはたくさん存在しており、本来のあるべき姿と矛盾をしていると感じます。施設規模を小さくすれば運営しやすくなる?ケアがよくなる?現状からみる施設運営は、小規模こそ難しさがあるようです(小規模施設の運営実態については、今調査を進めていますので、他月でまとめてご紹介します)。
★ユニットリーダー研修実地研修で見えていること
ユニットリーダー研修では、3日間の座学研修後、5日間の実地研修を行います。
実地研修では、座学の学びが、どのように実践されているのかを客観的に見て学びます。
現在、ユニットリーダー研修実地研修施設は全国に55施設あります。厳正な調査を受け選ばれた施設です。実地研修期間中は、毎日振り返りの時間を設け、受講者の疑問や質問に答える環境と体制を整え、また、受講者が自施設に戻ってから取り組む課題に対する運営計画についても「赤ペン先生」を行い、1人1人に真摯に向き合いながらユニットケアの推進に力を注いでいます。
特に、管理者がこの場で語ることは受講者にとって非常に印象に残るものでもあり、平成25年度の事業報告書に掲載したとおり、「実地研修において参考にしたいこと」のアンケート結果で、73.6%という高い評価を得ています。これは、実地研修施設における施設管理者の役割の大きさを示すものである一方で、受講者が自身の施設の管理者に求めていることでもあるのかもしれません。
今回は、各実地研修施設から提出される実地研修修了報告書からそのことについて考えてみます。
★実地研修修了報告書より・・・受講者の現状
報告されたコメントと、そこから見えてきた傾向から、受講者を取り巻く課題を整理します。
1、受講者と管理者のコミュニケーションが図れていない
- ユニットリーダー研修座学研修時に作成した「ユニットケア導入・運営計画書」を管理者が見ていない、見てもらえない現状があるようです。そのため、管理者のコメントが記入されていない、誤字脱字の訂正されていない状況で研修に来ています。そのため、受講した者だけでは施設全体のことを考えることができず、せっかく研修を受けてもモチベーションの低下につながるケースが発生しています(管理者研修時でも、自施設の職員がどこの実地研修先に研修に行っているか知らない管理者がいます)。
2、物事を進める上での判断基準と伝え方がわからない
- 自施設の理念や方針が示されてない、組織内におけるユニットリーダーの位置づけ、役割が明確化されていないため、目標を定めるにも定めきれない受講者がいます。
- 同施設から毎回のように研修に来ているが、改善の跡が見られません。話を聞くと、報告がユニットミーティングや、ユニットリーダー会議の場でしかなく、本当に研修結果を生かそうという姿勢が見えません。
- 違いを知っても、言葉にして、計画的に取り組む段取りをして行動に移すことが何故大事なのかの理解を深める必要があるようです。不満、不安、愚痴から始まるケースが多いように感じます。
3、2ユニットの介護単位で、昼夜の区別なく勤務表を作成している
-
十分な人員が確保されているにもかかわらず、ユニット毎の固定配置ができていない状況があります。管理者には、24Hシートを作るようにとだけ指示をされたが、その意図するところがわからずにいます。なぜ、職員の固定配置をするのか、その意味が管理者と職員、双方での理解が不足していると思われます。
結果として、管理者がどのような考え、理解のもとで施設をマネジメントしているかが、大きな鍵を握っているといえます。本来であれば、管理者が、受講したユニットリーダーの背中を押し、ユニットケアの推進力になるべきはずが、その機能を果たしきれていないのかもしれません。日常の業務に追われているユニットリーダーだけが必死に旗を振っていても、施設全体がユニットケアを推進するには、あまりに難しいことであり、切実な問題です。
『誰よりも管理者がユニットケアの理論を理解し、自らが旗を振る』今後、どのようにこの課題に取り組むべきか、真剣に考える必要があると考えます。
★実地研修期間中の受講者の感想
- 優先順位をつけて、まずは、できることを確実にやる!
- 伝えることの大切さを知りました。知っているだけでは意味が無いと感じました。
- 講義だけではイメージできなかったことも、実習でイメージがつきました。
- 静かな環境の中、ゆったりとした時間が流れており、リビングに座っていると家で聞こえるような音が聞こえてきて落ち着けました。
- 職員がバタバタしていない印象を受けました。
- さまざまな場面で多職種が関わっていて、それが良いなと思いました。
- 仲間と意見交換ができたことで、施設に戻っても頑張ろうという気持ちになりました。
- 座学で学んだことを実際に目にすることで理解が深まり、施設に戻ってからのイメージが湧きました。
※複数回答があった場合も実数に含まれております。
★ユニットケア研修への行政担当者の参加・・・大歓迎
第11回ユニットリーダー研修 名古屋会場 報告
名古屋での第11回 ユニットリーダー研修に、「三重県 健康福祉部 長寿介護課 施設サービス班職員」の方にもお越しいただき、ユニットリーダー研修の学びの場をご覧いただきました。
担当者コメント:三重県 健康福祉部 長寿介護課 施設サービス班職員
今回の座学受講前に実地研修施設の美里ヒルズに視察研修に伺っていたこともあり、ユニットケアの良さを感じただけではなく、なぜそうしていたのかが、座学で学んだ理論とつながり、とてもよく理解できました。
県の担当者としてもユニットケアの理論を学ぶことで、新たにユニットケアを始めたい法人からの相談に対して、ユニットケアのハード・ソフト両面での良さを正確にお伝えできるようになると思います。
また、実地指導においても、ハード面ではユニット型施設ですが、ソフト面でユニットケアの理念を実践しているかどうか、ユニットケアのすすめ方、運営方法等を含めた指導や支援ができるようになっていくと思います。良いケアをしているからこそ、職員が定着し、ケアの質が担保できるということも伝えていきたいです。
ユニットケアの良さを知れば知るほど、そのことを他の施設にもっと伝えていきたいと感じた研修でした。
★社会福祉法人悠 ~結いの郷 施設見学~
“ユニットケア×地域密着型の相乗効果”
平成26年7月15日、愛知県小牧市にある社会福祉法人悠 特別養護老人ホーム結いの郷の見学をさせていただきました。今回は、施設長の吉田真一郎さんに“ユニットケア×地域密着型”についてお話いただきます。
社会福祉法人悠 特別養護老人ホーム結いの郷 施設長 吉田 真一郎 社会福祉法人悠 平成22年12月、法人設立をし、【法人理念】を『ノーマライゼーションの具現化~そのヒトらしい生き方を~』と定め、活動を開始、平成24年4月「結いの郷」平成26年4月「結いの郷 小牧」を開設いたしました。
共にユニット型地域密着型特別養護老人ホームであり、地域密着型サービスの指定基準・総則第五節第一款第一五九条に基づき、本物のユニットケア実践を目指すことを前提に【運営方針】を整理しています。
一、意思決定を大切にします
一、いまなお 輝く能力(チカラ)を大切にします
一、最期まで ご家族と共に寄り添います
一、そのヒトの暮らしを大切にします
一、そしてノーマライゼーションの具現化を目指します
この【運営方針】具現化を目指すには、ただ一人のヒトが生き、暮らし、その人生を全う(ここでは自己実現の実感と定義。)するということを愚直に問い続けていく姿勢が最も重要であり、それは福祉(Welfare, Well-being)や、対人援助(Human Services)の原点だと考えています。
ヒトが人生の全うを実感するためには、内的外的問わず様々な要素を段階的に満たす必要があり、その体系整理のヒントがユニットケア実践には溢れていると実感しています。
一つを例えると、その最も重要な姿勢を前提的に成すにはラポール(rapport)形成が必須であり、そのための環境整備をユニットケアでは1ユニット約10名前後の対象者における職員の『固定配置』で求めることになります。
従来型流れ作業ケアの実際では、一般的に30~60名規模のフロアに入所者の生活が集約され、20名前後の職員配置から成る介護単位によって、入れ替り立ち代りの介護が提供されてきたように思います。そうした場合であっても、所謂『○○介助』と言われる場面において、対象である入所者と介護職員とが相対し、介助の提供と享受の関係の中、限りなく狭義・瞬時におけるラポール形成を必要としてきたように振り返ります。
ユニットケアにおける『固定配置』の定義について略筆しますと、各ユニットにおいて固定的に配置された顔馴染みの職員により、それぞれに独立した勤務編成が可能な体制と呼べば良いでしょうか。
固定配置された職員は、出勤日は勿論のこと、その配属が異動となるまでの継続した期間を、原則一つのユニットへ通い続けることになりますが、このことにより、先述のように介助の提供と享受に相対する場面、またそれ以外にも食事の準備、掃除、洗濯等の日々の日常生活を数日、数週間、数ヶ月と共に過ごす中で関係がより深く積み重ねられ、本来のラポール形成以上の関係進展が期待されます。
さらには、郊外地区に立地する、地域密着型。入居されていらっしゃるご入居者のご家族においても、同町、若しくは近隣市町に居を構えていらっしゃる可能性も高く、結いの郷(結いの郷 小牧)においても、1日のご家族来訪者数は10~15名前後、月間延べ300~350名前後を数えており、『ユニットケア×地域密着型』における固定配置は、ご家族さえ巻き込んだラポール形成にも、その大きな効果が実感されます。
結いの郷(結いの郷 小牧)で言えば、地域密着型、定員29名全3ユニット。それぞれ9・10・10名に分かれて暮らしていただいており、それぞれのユニットへの介護職員配置は、常勤5名を目標に考えています。
3ユニット奇数構成。夜勤については、県が指導上求める、『協力2ユニット毎』の輩出では労働・給与条件等に差が生まれてしまうため、3ユニットから2名を組んでいます。
それであっても、定員29名地域密着型、基本的には就寝されている入居者の皆さんの最低限の情報さえ共有できていれば、支援に大きな問題は生じ難いと言えます。
適切な比較とは考えませんが、仮に『協力2ユニット毎』の夜勤配置を行う一般的な広域型偶数ユニットにおける夜勤時の対象入居者が夜勤職員1名に対して20名。結いの郷(結いの郷 小牧)においては、夜勤職員1名に対して14.5名。より人数規模に対する情報量の減少、個人に対する情報量についての増大を見込むことができます。
さて、1ユニット5名の常勤職員配置とすると単純計算、21日×5名=延べ105日の出勤日を数えます。内夜勤に排出する延べ日数が、60日÷15名×5名=20日。延べ105日から20日を差引くと85日が残り、早番遅番を1名ずつ毎日配置したとしても25日が残ります。この25日の職員が、それぞれのユニットや、入居者それぞれの生活リズムを勘案したリーダー決裁により、早番・日勤・遅番等様々な出勤体制に充足されていきます。
『ユニットケア×地域密着型』における、1ユニット約10名前後の対象者における職員の『固定配置』から得られる、ラポール形成の進展に対する期待を一つの例に挙げましたが、このことに端を発し、『ユニットケア×地域密着型』の効果や可能性の広がりを、少し大仰な言葉ですが、無限に実感するばかりです。
しかし、いまだ開設2年、今年4月に新規事業開始による体制刷新から数ヶ月の未熟な事業所でありますが、入居者・ご家族・職員・地域の皆さんと共に、推進センター始め、実地研修施設である先駆的事業者様に多くを学ばせて頂きながら誠心誠意務めさせていただきたく考えています。
★石垣島施設見学
~ある1人の思いをつなぐ~
7月沖縄県石垣島を訪問しました。きっかけは、平成15年第1回ユニットリーダー研修を受講したある1人の卒業者からのメッセージでした。
「一度は、違う業界で仕事をしていたけれど、やっぱり高齢者をサポートする仕事にもどりました。でも、今は特養ではなく、デイサービスです。日課はなく、その日の利用者にあわせた過ごし方をしています。でも、何かが違うのです。でも、その何かが上手く見出せず、他の職員へも上手く説明ができません。ユニットケアというケアの手法をもう一度学びたいのです。また、ここでは情報が入りにくい、得たくても簡単に外にいける環境でもない状況です。ここでのケアをもっと良くしたい、変えていきたい。そして、石垣島全体にそのことを伝え、広めたいのです。無理なお願いだとは思いますが一度、島で研修をして欲しいのです。(略)」
この思いを受け、日本ユニットケア推進センター内でも協議を続けました。沖縄県の受講率の現状はどうなのか、石垣島にある高齢者ケアサービス事業の実情はどうなのか。
この思いが届けられてから約半年も経過していましたが、沖縄県にはユニットリーダー研修実地研修施設もないことから、今後の研修事業等の展開を視野に入れた訪問が決定しました。
★研修の実現
研修は、「デイサービス年輪」のリビングで行われました。主たる参加者は年輪の職員でしたが、この研修企画を知った近隣施設からも2名の方が参加されました。堅苦しい形式は抜きにして、そもそも“ユニットケア”とは何なのか。今、この手法を使ってどのようなケアが施設で行われているのか、DVDを観て互いの感想と現状を話し合うスタイルとしました。
≪感想≫
- 「デイだから何かをしなければいけない…」って考えは疑問に思っていました。自分なら、嫌なこともあります。限られた時間でも、個別に対応することは可能だと感じました。
- 家族の介護もしながら、ここでの介護をしています。DVDを観て違和感を覚えるものではありませんでした。介護は奥が深く、切りのない仕事だと感じています。自分の家族が介護を受けるようになり、サービスを利用する家族の気持ちもわかるようになりました。
- 2ヶ月前から特養に配属されました。そこでのケアの現状に違和感を持ちました。DVDを観て全然違うと感じました。日頃、自分の親を喜んで入居させられる、また自分も選びたいと思える施設にするために、施設をどう変えなくてはいけないのか考えていました。DVDを観て、どのようにしたら個別にできるのか深く考えました。
「本人にあった個別ケアをどうしらできるのか…」それは、データをとること。「どうすればデータをとるようになるのか…」排泄も食事も、なかなかデータがとれないのが現状。上手く取れない中で、24Hシートは取れるのか…疑問は多いですが、まずは本を読んで勉強もしてみたいと思います。 - 在宅ケアの経験が長く、1対1のケアになれておりました。そのため、小さくても集団の中でケアをするのが苦手です。一人ひとりのデータがあれば、自分自身も楽しく時間を過ごすことができるかもしれないと思いました。
さまざまな経験を経て、今の職務につく皆さんの思いを共有しながら、その思いに一つひとつお話をさせていただきましたが、最後は「どのようなサービスを利用しようとも、私たちは、一人の人間を見ています。その方の暮らしの場が、在宅であっても、施設であっても、その人がどう暮らしていきたいのか、どう生きていきたいのか、そのことが全ての基本であるべきだ」というお話しで研修を終了させていただきました。
★デイサービス年輪の思い
株式会社朋優福祉会 茶話本舗デイサービス 代表取締役 ベルトラム・朋子
デイサービス年輪では、「年輪は人権、人格を尊重し愛情と真心をもって高齢者の福祉サービスに努めます」を事業理念としています。そのため、全てはその日の利用者に合わせ て行動をします。例えば、食事は基本的には献立はありません。その日仕入れた野菜などで何が作れるか、何が食べたいのかで考えます。入浴は家庭にあるような浴槽で一人ずついつでも入れます。デイサービス利用後、そのまま宿泊も可能です。地域や家族の実情にあわせてサービスを利用できます。これが、デイサービス年輪の理念を具現化するケア方針なのです。
今後も従来のデイサービスの形態、決められた一日のスケジュールにとらわれず、利用者と触れ合う時間、お話をする時間を大事に、年輪らしい「おうちデイ」で本人のペースに合わせた居心地の良い居場所を提供し、少しでも長く在宅で生活が続けられる一助となる存在を目指していきたいと思います。
★デイサービスと施設ケアの両方を経験して感じたこと
★ユニットケアというケアの手法をデイサービスでどう活かせるか
株式会社朋優福祉会 茶話本舗デイサービス 生活相談員兼介護職員 三浦 加代
デイサービスと特養は事業目的が違うのでサービスの内容も違って当然と割り切っている自分がいました。ユニットケアの特徴や手法を活かすことで個別ケアを行うことができ、利用者の生活や表情が変わったことを実感してきたにもかかわらず、デイサービスは一日の中の一部分でしかなく、暮らしの継続と考えることができていませんでした。今回改めてDVDを観ることができて、一人ひとりの生活スタイルは違うという当たり前のことに気づくことができました。デイサービスだからできない、特養だからできるということではなく、過ごす場所が違うだけで生活は続いているということを忘れずに、その人に合わせた生活を提供するという思いを大切にしていきたいと思います。
一人ひとりに合わせた時間の過ごし方をみること。一日24時間の中の8時間であっても、その人がその人らしく心地よいと感じる時間や空間を提供すること。デイサービス利用者をひとくくりに考えるのではなく、全員が同じでなければ不公平という考え、平等という名の不平等にならないように個別の思いをみていくこと。そして、その思いを組み取る力の重要性と、職員本位の個別ケアであってはならないということ。そのためにも、現在は24Hシートの利用はできていませんが、デイサービスにおいてもとても有意義なものだと実感することが出来たので、今後はできることから取り組んでいきたいと思います。
★施設見学
訪問期間中、特養・老健・デイサービス(従来型・ユニット型)の見学をさせていただきました。どの施設も眼下にきれいな海や島々を望み、爽快な景色が何よりも印象的でした。また、建物も、赤瓦を使用している施設もあり、台風時の強風に備えてしっくいで固定した赤瓦屋根は、屋根を重くして家を守る役割も果たしているとのことで、沖縄の気候や風土の特性と、沖縄らしい外観の演出を感じるものでした。
施設の中は、どの施設も慌しい印象を受けることはなく、ゆったりとした時間の流れを感じました。しかし、それと同時にわたしたちの情報配信力をもっと積極的に取り組む必要を感じました。これは、決して目にしたものを否定するものではなく、ユニットケアの仕組みにそって物事を整理していくことで、入居者強者にとっての暮らしやすさや、介護に携わる職員にとってのケアのしやすさがさらに可能性を引き出せると感じたからでした。
★指導者としての抱負
~実践、質の向上のために~
指導者の活動を通じて大切にしていることは、受講者が自分の施設の課題を整理できるように研修を進めるということです。施設ごとに課題や悩みはあると思いますが、自施設での実践の事例を交えて具体的に多くの情報が得られるようにして受講者の皆さんとコミュニケーションを図り、やる気を触発しています。指導者も受講者も一緒に学んでいけるような会場の雰囲気を作ることを心がけています。