ユニットケア研修に携わる「研究報告」と「受講者の声」(9月)
★日本ユニットケア推進センター 研究事業
「平面図から読み解く地域密着型ユニット型施設の空間整備の現状と特徴」
東北工業大学 教授 石井 敏
センターからの委託を受け、東北工業大学建築学科石井研究室にて標記の研究課題について、調査分析を行うこととなりました。調査研究では、地域密着型のユニット型特別養護老人ホームと、近年増加傾向にあるユニット型の単独ショートステイ施設に焦点を当てて、平面図からみえてくる平面計画の実態と特徴を明らかにすることを目的としています。平成25年度および今年度の上半期に、センターでの研修を受講した受講者が持参した施設平面図を調査分析の対象として、分析に取りかかったところです。
たかが「平面図」、されど「平面図」です。平面図から見えてくる各施設の平面計画(室の構成や諸室の配置・整備状況)は、施設の運営やケアを反映させた形であると同時に、平面によって規定される運営やケア、また逆に運営やケアを良い方向(場合によっては悪い方向)に導く可能性も孕む、重要な要素を数多く含んでいます。平面図の向こう側にある(いる)暮らしや利用者、スタッフの動きを想像しながら、図面から読み取れることを拾い上げていきます。
現時点での分析対象数は地域密着型特養が148施設、単独ショートが36施設です。詳細な分析は今後の作業となりますが、一通り図面を確認したところ、以下のような特徴が見えています。基準定員が29名以下の地域密着型特養ですが、多くが定員29名で設定されています。この場合、基本的には3ユニット構成となります。ユニット数が奇数になることを好まず、また経営・運営の効率化を図るため、多くの施設でショートステイを1~3ユニット併設するパターンが見受けられます。結果的には合計定員が50名を超えるものもあります。地域密着型特養148施設のうち、ショートステイ併設型は79施設と半数を超えています。さらに、デイサービスを併設している施設も多く(29施設)見受けられ、また他の地域密着型施設(小規模多機能18施設、認知症高齢者グループホーム7施設など)を併設しているものもあり、事実上、大規模な「地域密着型複合施設」となっている事例もあります。
地域密着型特養は、文字通り地域に密着した小回りの利く施設(機能)となることが求められていますし、そのためには建築的な規模(=施設の規模や複合の度合い)も重要になります。小さくなければできないこともあれば、大きいことで可能となることもあります。機能の複合化がもたらす地域密着型施設の特徴や価値、また課題等も平面図を通して分析していきたいと考えています。
また、地域の中でどのような役割を果たしていくのか、そのあり方も地域密着型施設には問われます。そのためには、地域に開いた機能や場をどのように設けていくか、ということも大きな焦点となってきます。平面図からは、地域密着型だから可能となる地域に根差し、また個性を持った施設の計画に積極的に取り組んでいる事例も窺い知ることができます。特徴的な建物づくりや取り組みを行っていると思われる事例を抽出して訪問調査を行い、その建築環境面での実態の把握と同時に運営の状況もヒアリングしながら、事例集としてまとめていくことも併せて行う予定です。ご協力いただく施設にはあらためてご連絡させていただきますが、調査の依頼があった際にはぜひともご協力のほど、よろしくお願いします。
★ユニットリーダー研修で見えている小規模施設の現状
これはユニットリーダー研修のある教室でのデータです。
フロアや施設全体を一つの介護単位として支援を展開している施設が3施設あります。これらの施設にユニット数を伺うと、大体が3ユニットの小規模施設です。3という奇数ユニット構成より勤務を組むのが困難、それに介護要員不足が重なり、29人の入居者を1つの集団として支援している、大集団ケアになっている現状が発生しています。
ユニットケアとは小規模ケア体制を組み、いつものあの人の顔なじみの関係性より、些細な反応を見逃さず、きめ細かな支援をする方法論です。グループホームも然り、従来型施設でもグループに分け少人数化を図りつつあります。
管理者研修では、29人規模で建設費を6~8億、借り入れを4億という声も聞かれる中、地域密着型施設の本来のあり方を発揮するには、実際の運営面も含めた検討が求められます。
★ユニットケア研修に携わる受講者の声をお届けします
≪第4回 ユニットケア施設管理者研修 ≫
- 参加して、ユニットケアは誰の為か、どうしてなのか、本当の意味でユニットケアの良さが分かった。実現に向けての方法が理解できました。どのように職員を引っ張っていくか実現していきたいです。
- 自分の中に燃え上がるものができた。施設の中心にある自分が強く志さなければならない。それ以前に今までできていなかったことが恥ずかしくも感じた。
- とても有意義な研修を受けさせていただきました。もっと早く受けておくべきだと感じています。これまで3か所の特養建設に携わった経験がありますが、見かけはユニットにしましたが、そこにエビデンスがあったかと言われれば、答えに困ります。ハードだけでユニットケアが完成しているわけでもなく、個別ケアが100%出来るわけではない。それを目指すのは理念ありき。それを語ることの重大さも心から実感いたしました。
- 参加する前の緊張と不安とは違い、この3日間、あっという間の研修でした。「もう終わってしまったのか…」と、どこか残り惜しい感が強くあります。事前課題をやっていることからスムーズに研修内容を受け入れられたことも大きかったと感じました。全国60名の方の意識の高さもあると思いました。理事長を務める医師から自分のような未熟なものまで立場は様々ながら同じテーブルに座り、意見交換できることもありがたかったです。今迄参加した研修会ではない、多くの方々と交流させていただいたことも大きな収穫です。購入したテキストをしっかり熟読していかなければと思います。
≪第20回 大阪会場 ユニットリーダー研修 ≫
- 施設とは、自宅+介護力である。時代が変わるにつれ、今はユニット型に変化しているという話を聞き、自分が振り返ってみて、施設は住まいであるということ、そして自分はそこにお邪魔しているという大事な部分が欠けていたし、ハードはユニット型だが実際のケアは個々の入居者にあわせたケアが出来ていなかったのではないかと感じた。
一人一人をみて、ニーズを知り、ユニット内で情報を共有し、まずは入居者の暮らしが家庭に近づけるようにすることが必要であることが学べた。
自分の施設も自分が入居してもよいと思える施設にしたいと思った。
≪実地研修受入施設 ≫
- 施設の理念の大切さ。どこに向いて仕事をするのか、一番大切なこと。そして、理念をどのように具体化しているのかを見ていただいた。環境が人に与えられる影響は大きい。環境とは単なるハードや設えだけではなく、ユニットに流れる音や風や空気、職員の存在やそこで話す言葉も環境の一部。「暮らし」にこだわる必要がある。管理者に対する不満、不信等の意見が聞かれました。単に管理者のせいにするのではなくユニットの活動に巻き込むことも大切。裏付けを持ってしっかりプレゼンすれば管理者は動きます。まずはどこを向いて仕事をするかが大事。
★第1回看護職のためのユニットケア研修 開催レポート
【開催】 平成26年8月25日(月) 10時30分 ~ 18時00分
【開催】 平成26年8月26日(火) 09時30分 ~ 16時00分
【会場】 御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンター
〝ユニット型施設における入居者の暮らしを支える看護職の在り方を考えよう〟をテーマに、看護職のためのユニットケア研修を開催しました。
今年は、重度で医療ニーズの高い入居者の事例を基に24Hシートも使用し、生活行為毎に看護職が持つべき視点や役割、そしてチームケアを具体的に検討していきました。毎年受講者からは、「年に一回は先生の話を伺い、看護職の原点に戻りたい」と感想が寄せられる宮城大学大学院の小野幸子教授を今年も講師にお迎えし、「暮らし」とは何か、「老いる」とはどういうことなのか、議論を深めました。
≪受講者の感想≫
- 勤務経験・・・医療機関27年、高齢者施設1年
「こんなこともしない・気づけないなら、看護職をなくす」という小野先生の言葉にハッとしました。もっと、どんどん踏み込んでいかなければと自分自身に刺激を受けて職場に戻れる気がします。 - 勤務経験・・・医療機関30年、高齢者施設2年
看護師のアセスメント能力向上と多職種へ伝えるスキルが求められており、そのことをどのように全看護師と取り組むか向き合っていきたい。 - 勤務経験・・・医療機関3年、高齢者施設5年
業務に追われる中で、細かなところまで気づけずいたことを再確認させられた。看護師としての視点、アセスメントをよくして、ユニットケアにかかわっていきたいと思った。
☆おまけのサプライズ☆
研修では、「便秘対策は?」「水分を取らない方用の飲み物は?」等の具体的質問が多く出ます。何とその答えに・・・、情報交換会で食事業者が答えてくれました。
「ハーブコーディアル」2種がメニューで並べられました。「エルダーフラワー」は、風邪・インフルエンザ対策・・・、「ローズヒップ&ハイビスカス」は、便秘対策、レモン10倍のビタミンC・・・。予防が一番の中で、まさに「暮らし」に即した包括指示(看護師の大事な役目)です。
★ふくしまユニットケア協議会 ~熱心な新人職員~
【開催】 平成26年7月28日(月) 10時30分 ~ 16時00分
【会場】 ウェディングエルティ
ふくしまユニットケア協議会は、「ユニットケアに関する理解を深め実践に結び付ける」ことを目標に日々邁進されております。平成26年度は、新人職員を対象に、「ユニットケアの知識を得る、暮らしをつくることを理解してもらう」ことを目的に開催され、推進センターも上記のテーマで研修を進めさせていただきました。
研修の開催にあたり、鈴木会長から「ユニットケアとは何か、日々、悩んでおられることを今日は解決していってください。」との挨拶をいただきました。
当日は、56名の新人職員(3年未満)が集まり、グループワークを重ねました。冒頭から「暮らしとは何か?」「あなたが考えるユニットケアとは?」をテーマに、グループワークを行っていただきました。年数を重ねている職員が戸惑いながらも、進行を務め、「普通の暮らし、寄り添うこと、馴染みの関係をつくること、生活習慣を大切にすること」等、たくさんの意見を引き出してくださいました。働き始めてから数ヶ月しか経過していない職員も、学校では学べなかったユニットケアを熱心に理解しようとし、質問している姿が印象的でした。
この協議会に参加している施設から、【ユニットケア研修実地研修施設】が誕生しています。今回参加された新人職員が、入居者との関わりを深め、その方の最期の時間を手助けし、共に過ごすという、他の職種にはない良さを実感していただければ幸いです。
≪ユニットリーダー研修指導者メッセージ≫
★実践、質の向上のために ~ごめんね。と言わない介護~
社会福祉法人綿半野原積善会 かざこしの里 フロアリーダー 小松 千佳子
「ごめんね。」は従来型の施設で働いていた時の口癖でした。何をする時でもまず、「ごめんね。」と声をかけていました。
ユニットケアではごめんねと言う機会、場面がなくなりました。
「ごめんね。」のかわりに「どうしますか?」と聞くことができます。
「どうでもいいよ。」と言っていた入居者の口からはだんだんと要望が聞かれます。その要望に応えることができる幸せをユニットケアで感じています。まさに24Hシートはいつ何をこの人にしたらいいのか、本人の希望、私たちのケアが目で見て誰にでもわかるものです。
まだまだ、受講者の中にはごめんね。と心でつぶやきながら働いている人も多いと思います。まず、自分はどのように働きたいのか、そして自分が入居者だったら…。受講者の質問には実践につながる、具体的な経験談を交えて伝えることをモットーにしています。
★ひとこと コラム
私たちの研修は、多くの方のお力をいただき運営できています。その一つとして、情報交換会の食事の業者の方々がいます。共に同じ会場ですが、左の写真は、8月の看護師研修、右の写真は9月の管理者研修です。左は女性が多いので華やかに、右は秋になったので秋色です。また、看護師研修ではヨーロッパの伝統的なハーブ飲料「ハーブコーディアル」を用意して下さいました。看護師さんには体に良い飲み物のご紹介です。さあ、皆さんは、何を感じますか?(え!写真が悪いって・・・。ごめんなさい。) 「ホスピタリティ」の学びの場になりました。本当に感謝です。