馴染みある住まいでの看取りを(介護老人保健施設 ぺあれんと 小松 勝子)
2021年3月1日 更新
新型コロナウイルスが猛威を振るい、医療現場が緊迫や疲弊している中、当施設も、生活の場での感染予防に細心の注意を払いながらご支援させて頂いています。
そんな中、ご夫婦で入居されているAさまから当施設での看取りのご希望がありました 。90歳代の男性で、徐々に食事が食べられなくなって体重が減りましたが、お亡くなりになる寸前まで、歩行器でいつものようにリビングの定位置で、テレビの前のご自分の椅子に座り、ゆっくりご自分の時間を過ごされました。認知症はありましたが、ご自分の人生の終焉を最期まで穏やかに、その方のお人柄の様に静かに穏やかに息を引き取られました。本当に安らかなお顔でした。
この方のケアで、大切にしてきたことは、お元気な時のご本人の意思を尊重し「延命治療はせず、住み慣れたぺあれんとで、馴染みの職員に囲まれて、自然に看取りたい」というご家族の想いです。ご家族とスタッフと多職種と共に何度も話し合いを持ち、残された時間をどう過ごされることが良いのか考え、ご夫婦が共にお過ごしになる時間を大切にしました。隣ユニットにご入居の奥様は、重度の身体ケアが必要でコミュニケーションも困難で、いつも無言の面会ですが、しっかり手を握りあって目と目で心を交わされる様子が、今でも心に残っています。コロナ禍でしたが、面会は、娘様ご家族が施設内感染に気を配って下さり遠慮がちでしたが、感染防止対策を行いながら居室で一緒に過ごして頂きました。偲びのカンファレンスでは、「ぺあれんとで良かった」とお言葉を頂きました。
入居者さまの最期に立ち会わさせて頂くことは、多くの学びがあり、職員の看護観・介護観を育み、やりがいにもつながります。多死の時代、今後も個別ケアの充実した当施設でのエイジングインプレイスを実践し、入居者さま、ご家族の思いに寄り添っていきたいと思います。
入職してから思うこと(特別養護老人ホームゆうらく 吹野 美奈)
2021年2月1日 更新
私がゆうらくに入職し14年。当時はユニットケアという言葉も解らず、「95名の方に1人でどのようにリハビリをしたらよいのか」という悩みからのスタートでした。
関節可動域訓練や立位訓練を実施していた時期もありましたが、どれだけやっても一人では無理で、拘縮が進んだり、身体機能が低下してしまう人が多い現状がありました。
その後試行錯誤して今、言えることは「一人の力では何もできず、24時間サポートしているユニットスタッフと協力することで身体機能の維持・向上に繋げることができる」ということです。24時間365日の生活の中で、移乗、座位姿勢、排泄、入浴、睡眠などは必ずあることで、介助の仕方によってはその方の身体の緊張を亢進させ、拘縮を作ったり、褥瘡や意欲の低下などの二次障害を引き起こしてしまう原因にとなってしまいます。だからこそ、障害部位に対するリハビリではなく、福祉用具を使ってその方に合った入浴・排泄・移乗などの介助方法や座位・臥位のポジショニングの提案や指導を主に行っています。それによる効果はあり、そういった成功体験がユニットスタッフのモチベーションにも繋がっていると感じています。また、それ以外の関わり方としては、特養は“終の棲家”であるため、最期を迎えるその時まで一緒に笑って穏やかに生活していただけるように、その方の想いや過去の経験に繋がるような楽しみのある活動が出来ればと思います。これからも入居者様一人ひとりの暮らしが豊かになり「ゆうらくでよかった」と思ってもらえるよう、ユニットスタッフ、各専門職とともに考え取り組んでいきます。
リーダーとして難しいと思っていること(特別養護老人ホーム清明庵 佐藤 敏恭)
2021年2月1日 更新
私が勤めるユニットに転倒を繰り返す入居者がいました。清明庵では、その都度、状況説明の連絡を家族に入れています。今回、その入居者のご家族でキーパーソン(窓口)となっていただいている方が、体調不良のため、弟さんに代わるというケースがありました。そこでの出来事をお話しします。
私たちは、それまで弟さんとはほとんど関わることはなく、弟さんは、入居者の認知力やADL、暮らしぶり等の現状を十分には把握されていないようでした。にもかかわらず、施設から今までと同じように事故の状況説明の連絡を入れたものですから、弟さんは、転倒を繰り返し報告してくることに、だんだんと不安感や不信感が募り、こちらに対し怒りだすこともありました。
そのことから、私たちは、転倒などの報告することもさることながら、まずは本人の状態を知ってただくことが必要だと気がつきました。そこで、弟さんに理解してもらうために、その都度、現状の説明・暮らし方・病気の説明等を説明しました。そうすることで、弟さんはだんだんと怒り出すこともなくなり、「いつもありがとうございます」と言っていただけるまでになりました。さらには、支援について協力的に考えていただくようにもなりました。
私達が知っている本人像と家族が知っている本人像を、ある程度一致させておかないとズレが生じます。ですが、本人と家族の距離感や関係性は、人それぞれです。それを理解し、それぞれの家族が、現状をどうとらえているのか知ったうえで、どう働きかけていくのかということが必要だと思いました。入居者への個別対応はもちろんですが、家族に対しても個別対応が不可欠だと学びました。