今できることを(特別養護老人ホーム清明庵 村上 翔)
2021年2月1日 更新
新型コロナウィルス感染症は、2020年1月に日本国内で初の感染者が出ましたが、1年前は、世界がこのような状況になるとは思ってもいませんでした。あの頃は、入居者と「東京オリンピック楽しみだね」「札幌にも来るんでしょ。見てみたいね」と楽しみな話ばかりしていました。しかし、あっという間に今まで当たり前だったことができなくなりました。雪が溶ける前には入居者との外出や家族の面会が禁止され、春には緊急事態宣言が発令され、桜を一緒に見ることもできなくなり、オリンピックも夏祭りも中止になりました。こんなに何もできない1年はなかったと思います。寂しい気持ちや何もできない悔しさもありましたが、日々の暮らしの中で何かできることはないか、今何をすることがいいのだろうかとスタッフと一緒に話をし、考えることが多くなりました。
その中でこんな時だからこそ毎日出来ることをしようとなりました。入居者の重度化も進み、会話が減っていた中で、意識的に入居者と多く会話をする機会を増やしていきました。新型コロナウィルス感染症によって今までユニットで行えていたイベントが行えなくなったことで、コミュニケーションを今までよりも大切にするようになり、入居者の家族に会えない寂しさや、家族を心配する気持ち、普段気づけないことに気づくことができました。
さらに、少しでも不安を減らし、安心してもらえればと家族から電話が来た時やこちらから家族に電話をした時には、短い時間でも話をしてもらうようにしました。家族の声を聞き、「あー良かった。元気そうな声が聴けた。」と泣いて喜ぶ入居者もいましたし、家族も入居者の声を聴けたことで「安心しました」と電話をする前よりもホッとした明るい声になっていました。
今後は今行っていることを継続していき、入居者との会話の気づきを日々の暮らしにつなげていきたいと思います。
85歳の高齢者とWii(ゲーム)(特別養護老人ホームかしわ園 岡村 紀子)
2021年1月5日 更新
あるユニットのお話です。
そのフロアに行くと、あるユニットの複数の入居者様があてもなくフロア内を行き来する光景が暫く続いていました。2~3か月後、そのフロアに行き来していた入居者様方の姿はありません。ユニットに行くと、一人はお部屋で真剣な表情でWiiで遊んでおり、1人はリビングの端に作られた『ソファに座ってDVDが視聴できるコーナー』でドリフのDVDをみて爆笑され、1人は廊下から見えないように新たに木製の衝立が設置された陽のあたるセミプライベートスペースのソファに横になって雑誌を片手にうたたね、と思い思いのゆったりした時間を過ごされていました。ユニットの職員が、それぞれの入居者様について再アセスメントし皆でアイデアを出し合って取り組んだ結果が見事に表れていました。
またあるユニットのお話しです。ヘルプに入っていた時のことです。歩行がおぼつかないお爺さんが「俺の番だろ?」と焦ったように私のところに来ました。ひとまずイスに座ってもらい24Hシートを見ると、話し方が質問系の時はこのように答える、強めで方言混じりの時はこう返すなど、いくつか対応のパターンが細やかに記載されており、その通りに答えると、「そうか。じゃあ大丈夫だな」と安心した表情で部屋に戻って昼寝をされました。
かしわ園には12の特養ユニットがあります。それぞれのユニットで上記のようなエピソードが沢山あります。固定配置された職員と入居者の関係だからこそ入居者が安心して生活が送れるユニットケアにこれからも施設全体で取り組み続けたいと思います。
看護師としてユニットケアを学ぶ(特別養護老人ホームかしわ園 旭 奈央)
2021年1月5日 更新
病院勤務が長かった私にとって、初めて今の施設を見学した時、設備が家のようだなという印象でした。従来型とユニット型の違いも知らなかった私にとって“施設で暮らすこと”は“集団生活の場”というお粗末なイメージでしかありませんでした。入職後、ユニットケアにおける看護師向けの研修に参加させていただくとまさに目からウロコでした。「暮らしの延長」という分りやすい新鮮な言葉は実は奥が深く、看護師に求められる役割は病院とは全く異なります。早い時期に研修に参加し、学べたことはとても有意義でした。入居者全員と関わる看護よりも、固定配置で関わるスタッフは、入居者の一番の理解者です。実際、看護師が気に留めないような些細な変化に気付いてくれることも多く、「朝から様子がいつもと違うんです」と相談があった後に発熱することもあり、流石だなあ、と感心することがあります。この様に細やかに見てくれていると、入居する方やご家族も安心だろうなと感じています。施設では、ユニットケアを支えているスタッフを中心に他職種が関わっており、看護もその中の一つの役割を担っています。看護師もユニットケアについてしっかり理解することは、連携をスムーズにとるために必要なことです。それぞれが自分の職種の役割を発揮しつつ、連携することでより良い暮らしの継続へと近づくものと感じています。