施設全体で食を支える(介護老人福祉施設 よなご幸朋苑 三隅 智加子)
2020年9月1日 更新
私は当法人で17年勤務し、従来型特養や複合施設等を経験する中、「食はご利用者の生活の一番の楽しみ」と言われながらも、介護の現場は排泄ケアや入浴等に追われ、食に関する問題は栄養・厨房の仕事という風潮が強くなりがちであると感じていました。しかし、従来型特養がユニット型へ変わり、ユニットケアを実施することで、「食」への取り組みが大きく変わりました。
ユニットケアのメリットは、「個々の生活に寄り添う中で、食においても重視されること」。ご利用者の生活において食の影響は大きく、身体面や精神面、アクティビティ等にも繋がり、多職種における課題ともなります。家庭的な雰囲気を目指す中、食事のカットや好みに合わせた食事の提供等、今まで厨房で行っていた業務の一部を、介護側に依頼する体制が出来たことで、厨房職員は調理そのものに力を注ぎ、新たな形態食の導入等も可能になりました。家庭らしさを目指し、多職種の介入と、施設だからこそ出来る調理、栄養の要素が加わることで、安心や楽しみのあるサービスの提供に繋がります。
現在は栄養スクリーニングを通じて、在宅サービスへの介入にも取り組んでいます。今後はユニットケアで培った経験を活かし、在宅における食や栄養の問題に携わることで、地域(在宅)での生活を支える役割を多職種と共に担っていきたいです。
施設に暮らす全ての人に「当たり前の暮らし」を(特別養護老人ホームくぬぎ苑 山下 愛)
2020年8月3日 更新
ユニットケアの理念は暮らしの継続です。たとえ施設に入居したとしても、可能な限り自宅に近い環境でその方らしい暮らしを送っていただきます。
くぬぎ苑では、きれい好きな104歳の入居者が掃除を手伝ってくれています。また、ある入居者は「薄い肉じゃなくて、塊の肉が食べたい」と希望され、次の日にレストランへ行き、150gのステーキと生ビールを注文されました。その時の満面の笑みは今でも忘れません。このようなことは、私たちにとっては当たり前の日常です。
しかし、施設に入居したお年寄りはある日突然、当たり前の日常が一変してしまうのです。本来住む場所が変わっただけのはずが、暮らしぶりまでが変わってしまうのです。
ユニットケアは、「当たり前の暮らし」を守ることができます。それは、施設でのこれからの望む暮らしをしっかりとアセスメントし、24時間シートにおとしこむことで、入居者・家族のニーズに応じたケアを実践することができるからです。ユニットケアこそが、一人ひとりをみていくケアを実践する最適な介護の手法であると言えます。
施設が暮らしの場であり続ける為には、「暮らしの継続」のもと、法人理念を念頭に置き、ユニットケアの4つのポイントをおさえながら、職員全員が共通の方向に向かって進んでいかねばなりません。
これからユニットケアに取り組もうと思っている皆さん、どんな些細なことでも構いません、小さなことから、出来ることから、少しずつ取り組んでみてください!
ユニットケア「ここで暮らして良かった」(特別養護老人ホーム花巻あすかの杜 阿部 千春)
2020年8月3日 更新
私は、これまでたくさんの入居者様を見送ってきました。その中で老衰により徐々に枯れるように亡くなる方、急変して突然のお別れが訪れる方、入院となり最後は施設で看取ることなくお別れとなる方もあります。ユニットケアで看取りの際の「チームケアの連携」について、普段から最後はどのように迎えたいのかという話をしていることが大切だと思っています。
昨年亡くなられた大きな農家へ嫁いだという方の例ですが、施設に入居して一度もご自宅へは帰ったことのない方が亡くなる3日前に「家に帰りたい」と呟きました。お身体は大分弱っていますので心配な面はありましたが、入居者様の最後の希望をかなえてやろうとスタッフで話し合いました。そこからは他部署との連携で翌日にはご自宅へ向かうことになりました。ご自宅では愛犬の出迎えを耳で感じ、大農家である野菜の収穫を目と匂いで感じ、自分が居た頃のままの自宅を見て安心し最高の笑顔をご家族に見せていました。
お世話していた方との別れは辛いですが、看取りの後は他部署を入れた振り返りをしっかりと行なっています。そのことで「もっとこうすれば良かった」というスタッフの次へのステップになります。小さな呟きも形にしていくことの大切さを学べると思っています。
入居者様の思い、ご家族の思いを、これまでの関係性を大切にした支援、日頃の暮らしの先に最後までどう生きるか、どう過ごすか「生きる力」を支えるのが私たちの役割と思っています。