「暮らしを感じるユニットケア」(特別養護老人ホーム真寿園 平山政浩)
2017年5月1日 更新
先日、久しぶりに入職した当時(19年前)の振り返りシートを読み返した。懐かしくページをめくっていると「今日入所された方は、病院ではないのに『入院したくない!』と何度も叫んでいた。痴呆症なんだろうか?」と書き綴ってあった。何気ない文書ではあるが、「痴呆症」「入院」「入所」という言葉は懐かしく感じた。
確かに入職した当時は「なんで入院させるんだ!」「早く退院させろ!」という言葉を耳にすることがあったが、15年前の平成14年に新築移転し、ユニット型になって以来、「入院」「退院」と言う言葉は一切聞かなくなった。一瞬、なぜだろう?とも思ったが、それは、今は病院に見えないからだと気付いた。認知症を患っている方は様々な情報から状況を把握することは苦手だが、五感からの情報の理解は得られることが多いと思っている。
そんなことから真寿園では、言葉で伝えなくても暮らしを感じて頂けるように五感への働きかけを心掛けている。例えば、食事に関しては、視覚的にキッチンやダイニングと分かってもらえるような設えをし、食事時間の少し前になれば、ご飯の炊きあがる匂いや味噌汁を作る際の具材を刻む音がしたりと、改めて「これからこの場所で朝ご飯を食べます」と伝えなくても、視覚や嗅覚、聴覚でそれを感じられる働きかけをしている。現に入居者からは「ご飯が炊けたぞ、おかずを出してくれ」とか、食器を洗っていれば、「早く片付けてお茶にしよう」など、私達の日常の暮らしと同じような会話のやり取りがされる。そんなやり取りが私自身がほっとする時で、暮らしを感じる時でもある。
「ユニットケアは従来型スタッフの意識も変える」(特別養護老人ホーム 松籟荘 須田聡子)
2017年4月17日 更新
本年度、松籟荘は開設30周年目を迎えました。振り返りますと、様々なことが思い起こされます。
従来型の入居者50名とショートステイ利用者4名を介護職員11名と看護職員2名の職員配置でケアしていた開設当初、職員中心の業務スケジュール・一斉介護・流れ作業、当時はそれが当たり前でした。
平成14年、増床の機会を得まして、小規模単位型(現在のユニット型)か従来型の選択を迫られました。
そこで、当時の幹部職員と共にいくつかの先進施設を見学し『一人ひとりの生活スタイル・生活ペースに合わせたケア』をすべきことに気づき、手探り状態ではありましたが、平成15年10月からユニット型施設の運営を開始しました。
そのような中、従来型の職員達から「ハード面はかなわないけれど理念は同じですよね。私たちもグループケアをしたい。」との声が…。「とにかく、まずはやってみる。」というのが松籟荘。翌年から12名単位のグループケアにも取り組み始めました。以後、『職員の固定配置』『設えの工夫』『IT活用による記録の一元化・一覧化』『24時間シート』『家族の会の設立・運営支援』『多職種連携の仕組みづくり』等を試行錯誤しながら整え、ユニット型職員のみならず、従来型も『究極の目標は個別ケア』という共通の想いを持ち、職員不足に悩みつつも、「本質を忘れず、前を向いて歩こう!」をモットーに日々のケアに努めています。
「ユニットケアに出会わなければ今はない。」「従来型でも個別ケアを目指せるのです。」と改めて思うのです。
「言葉に依らないコミュニケーション」(特別養護老人ホーム かざこしの里 仲村茂樹)
2017年4月17日 更新
かざこしの里にユニットリーダー研修生が実地研修に訪れ、気づいたことや思いを口にされます。
その中で研修生から良く聞くのが、「言葉によるコミュニケーションをとっていないのに職員の連携が図られている、ユニットに落ち着いた時間が流れている」という感想です。
こうした連携は、「職員の固定配置」と「24Hシート」によるところが大きいと感じています。「固定配置」は職員が入居者さんを知る(共通理解を図る)上で大変役に立っており、そこから生じる「なじみの関係」は入居者さんに落ち着きをもたらします。
また、丁寧なアセスメントにより24Hシートを作成し、情報や支援(ケア)の共有(見える化)を進めた結果、一層の連携が図りやすくなりました。
「目に見えにくく、形に残りにくい」と言われた介護の仕事を「見える、形の残るケア」として示すことができるようになったことは、大きな財産です。