「 目覚めから始まるユニットケア」(特別養護老人ホームちくりんの里 片村元 )
2016年12月15日 更新
実習生が一番知りたい、そして見たいことの一つは、朝のモーニングケアと思います。朝は、一人で一番忙しいはずなのに座学では、一人ひとり目覚めてから支援にかかる?本当なのか?
個別の起床の必要性の根拠をここで少し、書かせていただきます。
人間の感覚の中で一番初めに朝、覚醒するところは耳だそうです。次に目。鼻と口は、胃に直結しているので一番遅いそうです。胃が動くことを蠕動(ぜんどう)運動と言いますが、年齢や体の状態によって差はあるものの2時間位あまり動かないそうです。しかし、胃液はすぐに出るので無理やり起こして食事をすれば胃液は、酸なので胃の壁を傷つけ、胃カタルや、胃下垂、免疫作用が阻害されるなど様々なリスクがある事が近年、わかってきたそうです。おなかが減って食べるという行為がいかに自然の理にかなっているかが理解できます。
起されるのではなく、目覚めて一日が気持ちよく始まる。
体に優しいケアは暮らしを支える原点となります。
今から10年前、賛否両論のある中「7時まで起さない」から始めてみました。そこでたどり着いた結論は「睡眠と覚醒のメリハリがあれば、逆に時間が生まれ、ゆったりとした時間で一日の暮らしが始まる。」というミラクルでした。目覚めから始まる起床は全ての施設において一番取り組みやすいケアの一つだと思います。その理由は資金が必要でないにもかかわらず効果が絶大だからです。
「始めがよければ終わりもよし」入居者の体のリズムに合わせることが、全ての基本となり、そこから一日の暮らしが始まります。
その恩恵として、入居者・家族・職員に笑顔が生まれます。
「道の途中…」(特別養護老人ホームくわのみ荘 跡部尚子)
2016年12月1日 更新
10年前のくわのみ荘は、従来型特養から全ユニット型に建て替えはしたものの“なんちゃってユニットケア”を実施していました。すなわちユニットケア対応のハードの中で、長年培った一斉ケアをしていたのです。
そんな折、私が施設管理者研修、介護長がユニットリーダー研修を同時期に受講しました。
私は東京で、介護長は福岡で、雷に打たれたような衝撃を受けて帰って参りました。自分達がやっているケアがユニットケアとはかけ離れていることの認識、なんちゃってユニットケアから脱却するための課題と方策を目の当たりにして途方に暮れました。
しかし、「本物のユニットケアをやろう!」と私達を奮い立たせたのが、理念でした。ユニットケアを実現することで、理念がより具現化できると、新たな共通認識を持ち、そしてトライしていく過程で折れそうになった時、理念を拠り所として邁進した日々でした。
実地研修施設に認定されて10年が過ぎましたが、当時私達がゴールと設定した「本物のユニットケア」はスタートであり、「個別ケアを極める」という頂きを目指す道半ばであることを、実感する日々です。
『ユニットケアは施設を変える』(特別養護老人ホーム望星荘 松浦久)
2016年12月1日 更新
実地研修では、毎日振返りがあります。ある受講者が振返りの中で話をしてくれました。その方は元々長崎の出身で、他県の専門学校を卒業し、その地で就職されたとの事でした。同郷ということもあり、「ご自宅はどちらですか?」と入居者の方に尋ねたそうです。そうしたら、その入居者は車いすの向きを180度反転し、ご自分の部屋を指さしながら、「そこが、私の家です。」と言われたそうです。
「ここに来て本当に良かった。」素直に嬉しいと思える言葉です。心からホッとする瞬間であり、ユニットケアを実践してきたからこそ、これまでに幾度となく聞くことができた言葉に違いありません。
11月1日、開設十三周年を迎えました。私自身はその歴史の半分しか携わっていません。時折、職員から開設当初の様子を耳にすることがあります。今の落ち着いた雰囲気からはとても想像もできない内容です。ユニットケアと出会い、明らかに施設は変わったのです。“出来るはずない!”“出来るのかな?”“出来るかもね。”幾多の葛藤を繰り返しながら…。ユニットケアの実践に取り組み、突然の就任となった新前施設長を支えようと、必死に頑張り続けた職員たちに心から感謝しています。
如何なる変遷があろうと、ユニットケアが目指す方向は普遍の真理だと確信しています。これからも職員共々、真摯に取り組んでいく所存です。入居者や家族の笑顔に繋がることを信じて!