「ユニットケアの魅力 ~食べたい物を食べたい時に~」(特別養護老人ホーム 賀宝の里 白松苑 縄田 公子)
2020年4月1日 更新
当苑の管理栄養士になって8年。常に「食事は安全で美味しく楽しく」を心がけて取り組んできました。また、ユニットケアや当苑の理念の下、本人の意向を汲んだ個別的なケアを重視してきました。食事の際には必ず各ユニットに出向き、できるだけ入居者様と関わるようにすることで、入居者様の様々な「顔」が見えてきます。どんな食べ物が好きなのか、苦手な物は何か、本人の嗜好をしっかりと把握し、できるだけ食べたい物を栄養バランスも考えた上で工夫しながら提供していくよう心がけています。また、本人の食欲や体調によってはいつもの食事時間を変更するなど、介護職員とも連携を図りながら臨機応変に対応するようにしています。
嚥下状態の良くない方、意思を伝えることが難しい方、食に全く興味がない方、また時間をずらしても食べてもらえない方などもあり、なかなか上手くいかないことが多い中で日々葛藤をしています。
食事は、単なる「栄養摂取のための行為」ではありません。食事支援は、単なる「栄養成分が満たされて温度管理徹底の食事配送業務」ではありません。好きな物を食べたい時に食べるという「楽しい時間」とならなければ意味はありません。
「食」は入居者の笑顔を引き出すための重要なアイテムの一つです。ユニットケアは、まさにその食環境づくりにおいて必要不可欠なものだと感じています。
まだまだ多くの課題はありますが、「大切な人に食べて頂く・心を込めて調理する」という想いだけは今後も大事にしていきたいと思っています。
「相談員として」(特別養護老人ホーム灯光園 髙塚 祐美)
2020年4月1日 更新
私は相談員として、お年寄りの入居の際のお手伝いをしています。それまで長く住んだ自宅からの引っ越しです。
ユニットケアでは「暮らしの継続」が合い言葉です。施設でも家での暮らしを続けられるとはどういうことなのでしょうか?それは、家と同じような形態で暮らすということではなく、自分が自分らしくいること、障害や不便なことがあっても変わらず自分であり続けることです。
多くの人が毎日何らかのこだわりをもって暮らしています。朝は日の出と共に起きる習慣の方、夜のテレビを観て10時過ぎに休まれる方、食後は必ずコーヒーを飲みたい方、自分の時間を自分のペースで過ごします。そういう生活を灯光園に入居をしても続けていただきたいと思います。
灯光園では入居の準備の際にご家族に「引っ越しをする」という気持ちで準備をお願いします。今まで使っていた箪笥や鏡台、テーブルや椅子を持ってきていただきます。また、家族や思い出の写真を飾って、安心して過ごせる部屋にしましょう、と話をさせていただきます。環境が変わっても自分の部屋の居心地の良さは変わらないようにしたいと思います。時には、自宅におじゃまをさせていただき、その方の今までの人生を感じて、部屋の雰囲気を再現できるようにと思います。
入居者のこだわりや役割が失われずに、その人を個としてとらえ支えること、その時間を一緒に共有できることを嬉しいと感じます。
「灯光園の暮らし」(特別養護老人ホーム灯光園 羽田 美由紀)
2020年4月1日 更新
リーダー研修では、老人福祉法に基づく「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準第33条」が繰り返し話されます。
「入居前の居宅における生活と入居後の暮らしが連続したものとなるように配慮しながら自律的な日常生活を営むことを支援」することが大切なところです。初めは具体的にどうしたらいいのかわかりませんでした。研修の中で、先進施設の講師の方が具体的に「うちではこんなふうにしています。起きたい時に起き、朝食を食べる。買い物へ行きたい時は出来るだけ工夫して出かける。好きなおかずは多めによそってもいい…」と自施設の事例を話してくれました。また実地研修でも、座学の通りのことが行われているのを目の当たりにしました。
偏食で食事の好みが給食では追いつかないFさんはおかずを購入し、ユニットで煮炊きもします。以前は考えられないことですが、今は男性職員もチーズ入りの卵焼きを作ります。職員も慣れてきました。左麻痺があり、車いす自走のMさんは目が覚めるとコールで職員を呼び、身支度を整え、車椅子に移ります。車いすに座った時から自由な生活を送ります。「朝ごはんを食べようかな」「ちょっと散歩に行ってくるよ」と、自分のペースで生活しています。Sさんは生活の殆どに介護が必要です。目が覚めるまではカーテンを開けません。一斉介護をしていた頃はできなかったことですが、職員の意識が変わり、当たり前になりました。
少しずつ、研修で具体的に教えていただいたユニットケアに近づいてきたな、これが自律的な生活の支援なのかな、と感じています。