コロナ禍で見い出せた価値(特別養護老人ホーム美里ヒルズ 世古口 正臣)

2021年8月2日 更新施設長

2020年1月15日、日本における新型コロナウイルス感染症の第1例目が確認されたのを機に、その後入居者の皆さんをはじめ、私達の生活は一変、2月25日からは、ご家族の面会制限、それ以降の研修やイベント等がすべて中止や延期になり、何もできないまま、いつまで続くのかわからない不安と戦う毎日でした。

それでも、3月に入ると就職説明会がオンラインで開催されることになったのを機に、施設としても感染対策を徹底することだけでなく、入居者の暮らしを少しでも維持できるよう、対策しながら形を変えて続けることができるか、新たにチャレンジできそうなことはないか、並行して検討していくことになりました。

その後、4月3日からオンライン面会・窓越し面会を施設でスタートさせたり、施設内研修を事前録画のオンデマンド研修に切り替えたり、法人の会議もリモートで開催したりと、少しずつではありましたが、コロナ禍でもできることから始めてまいりました。オンライン面会を実際にやってみて気がついたことは、今まで遠方にお住まいでなかなか会えずにいたご家族とも、気軽にコミュニケーションがとれる機会になったことです。つまり、これまで通りの面会が可能になったとしても、遠方や国外に居住しているご家族とは会えないのは変わりませんが、オンラインなら気軽につながることができる。これは、コロナ禍で生まれた素晴らしい変化だと思います。

8月頃には社外の会議はリモートで参加、外部研修もオンラインで参加できるものが増えるにつれ、夕方から夜にかけてのオンラインの勉強会の案内が急激に増えてきたように感じました。私自身は三重県の住まいでありますので、それまで都市部で開催される有名講師の研修会等があっても、そう頻繁に参加することはできませんでした。また、社外の会議に出席するためだけの出張が増えてくると、移動時間が増えるとともに現場を離れる時間も増えてしまうことを危惧していました。このコロナ禍では、会議も研修もオンラインでの参加が当たり前になりました。そのおかげで、様々な学びの機会が身近になったこと、そして移動時間のロスが無くなったことは、非常にありがたい変化です。

12月に入ると、施設ではリモートショッピングが始まりました。買い物に出掛けた先の職員のスマートフォンと施設のタブレットを中継で繋ぎ、ユニットにいらっしゃる入居者さんが商品を見て選んで買い物ができるという取り組みです。今では恒例行事になり、月に2度は洋菓子店と和菓子店にご協力いただき、リモートショッピングが開催されています。これまで買い物といえば、出掛けたい意向のある入居者さんへの個別の支援でしかなかったのですが、こういった機会が新たにできたことで、出掛けるのは疲れるから嫌だけど買い物はしたいという方のご意向にも添えることができるようになりました。

1月には、リモート初詣が企画されました。リモートショッピングの要領で、施設の地元の神社へ参拝に行った職員と施設をつなぎ、さらにプロジェクターで大型スクリーンに映して皆さんで参拝の様子を楽しみました。地元の神社というのは、本堂まで約170段の階段を登って参拝する難所、これまでは実際にお出掛けしても、階段の下の鳥居の前で参拝して帰るのが恒例でした。これがリモートになり、毎年お出掛けしていた入居者の皆さんであっても、階段を登って本堂で参拝する光景を目にしたのは何十年かぶりでした。また別の日には、お七夜さんという地元の大きなお寺のお参りにリモートで参加していただきました。こちらも初詣と同様、本堂の中に入るには急な階段や高い段差もあり、外から中の様子をうかがって皆でお参りするのが毎年の恒例でしたが、今回は皆さんに本堂の中の様子をご覧いただき、懐かしむ声をお聞きすることができました。また、入居者の皆さんからはお寺の庭園の様子を見たい、納骨堂まで行ってほしい、お寺の周りの町並みも見たいとたくさんリクエストがあり、今まで出掛けたとしても中に入るのを諦めていた皆さんや、出掛けるのをためらっていらっしゃった方にとって、これまでにない機会となりました。

これまでの約1年半、コロナ禍においては我慢ばかりの生活で、皆が息苦しい毎日を過ごしてきました。そんな中、きっかけは感染対策のひと工夫だったけれど、実際にやってみるとコロナ禍だけの取り組みで終わらせるには勿体ない、むしろコロナ前からあって然るべきだったなと思えることが多くありました。

コロナで多くの失ったものに対して目が向きがちでしたが、一方では価値ある気づきがたくさんありました。そういう風に考えることができるようになったことで、またいろんなアイデアが浮かんできます。もちろん、うまくいかないこともありますが、何事もトライアンドエラー、とりあえすやってみよう精神でこれからも頑張っていこうと思います。

新しい時代を迎えて(特別養護老人ホーム グレイスヴィルまいづる 淡路 由紀子)

2021年4月1日 更新施設長

2020年度は、COVID-19に出鼻をくじかれ、正直なところ、関西弁で言うなら「さっぱりわやや」という気分でした。まさかの事態で、何もかも準備不足でしたが、面会制限を始めてすぐ、とにかく新たにタブレットを用意し、LINEのビデオ通話による面会を始めました。そのうち入居者のお写真を送信するようになり、やがてご家族の方から入居者だけでなくスタッフあてにメッセージが届くようになりました。今やLINEは、ご家族とのコミュニケーションに欠かせないものになりました。私は、ご家族と楽しそうにメッセージをやりとりしてるスタッフの姿をみながら、特別養護老人ホームの「サービス」とは何か、入居者やご家族にとっての「サービスの価値」はどのようにすれば高めることが出来るのか、スタッフの幸せとは何か、どんなふうにすればそれが実現するのかなどを改めて考えさせられました。とりあえずやってみる、やりながらどんどん改善していく、そのうち思っていたのとは違うけれども、うれしいサプライズとなって実を結ぶものだと思いました。COVID-19がなければ、気がつかなかったかもしれません。
さて、2021年度がはじまりました。COVID-19の脅威は未だ予断を許さない状況です。けれど、2021年はCOVID-19によって、期せずして新しい価値観、ニューノーマルがもたらされた、新しい時代の始まりです。新しい時代は、これまでのシステムやオペレーションを見直す大きなチャンスです。古い衣はこの際思い切って脱いでしまって、気持ちもあらたに、入居者に寄り添い、受けとめ、一人ずつと向き合うサービスを進めていきたい、満開の桜を見ながらそんなことを思っています。

ユニットケアの先に見えてきたもの~18年間を振り返り~(特別養護老人ホームゆうらく 山野 良夫)

2021年2月1日 更新施設長

特養「ゆうらく」でユニットケアに取り組んで、早いもので18年が経過しようとしています。ユニットケアが目指すところは、個々の「暮らしの継続」であり、個別ケアの提供と暮らしの場創りに邁進してきました(?)が、その先に「地域福祉」という一筋の光が見えてきました。時同じく、社会福祉法人改革という大きな波が押し寄せ、地域における社会福祉法人の役割や地域貢献の在り方が問われることとなりました。特に、地方の中山間地域の社会福祉法人においては、その役割の再確認と法人の生き残りを賭けた活動が強く求められています。その中で、行政・法人・地域住民等が連携し、「共生社会」の実現を目指し協働することにより、一億層活躍社会の実現と困難性が増大する「町づくり」に向けた新規事業活動に取り組むこととしました。具体的には、地域共生社会実現拠点施設「いくらの郷」の整備・運営への取り組みです。「いくらの郷」は、大きな社会問題化している「ニート・引きこもり者」の社会復帰に向けた支援と、併せて疲弊している中山間地域の活性化を目指した各事業の連動・連携を推進し、相乗的効果を期待するものです。「農福連携」を模索した事業展開を目指しています。これは縦割り型の事業展開ではなく、地域や住民サイドに立った他施策との連携・相乗効果を期待した「混在型事業」展開を図り、潜在化している地域の社会的課題の改善を目指した「横串」の事業展開を推進しています。「いくらの郷」のもう一つの大きな特徴は、これまであまり交流の無かった社会福祉法人連携(町社会福祉協議会・障がい者法人・伯耆の国)により、一つの事業推進を、夫々の法人が役割を確認・実行し、協働することです。この法人間連携は、夫々のノウハウの発揮と、法人機能・役割の再確認と共に、町づくりへの積極的参画を促すこととなりました。

このようにユニットケアは、施設におけるケアの手法としてのみではなく、施設を含めた「地域」を再認識させるという、とんでもない「機能」を持った思想であると確信することができました。

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